いちおう臨床心理士ですけどなにか?②

いちおう臨床心理士ですけどなにか?(昔々その昔のはなし) ②-抑制、拘束編-

電話騒動が一段落すると、にしのくんケンカぁ〜という声が聞こえ、そちらに走っていくのです。

当時の精神病院は病室が全て畳でして、一室に結構ぎゅうぎゅう詰めに患者さんが押し込まれていましたので、ちょっとしたことですぐにケンカが勃発します。

しかも、幻聴や被害妄想などの症状を持つ方々がたくさんいて、なんというか話が通じないというか道理が通らないので、ケンカもおさまりがつかないし、いったんおさまってもすぐに再燃するんだね。

日々こういうケンカの仲裁にも追われるわけです。

時には抑制が必要で抑制帯(ヒモ)や拘束衣で患者さんを抑制拘束(しばる)せざるを得ないことも珍しくありませんでした。

精神病院の廊下には一見手摺りのような……、実は抑制拘束した患者さんを縛り付けておくためのものがありました。

廊下のソファーに抑制したり、畳の下に抑制帯を通して畳に縛りつけるなんてこともありました。

そういった患者さん達はソファーごと立ち上がってきたり、畳ごと立ち上がってきたりもしました。

また、精神病院には保護室とか隔離室と呼ばれる部屋があり、暴れる患者さんを隔離室まで連れていく……なんてことも日常茶飯事でした。

患者さん達のケンカは時にかなり危険な状況になることがあり、牛乳瓶を割って……や、病室の窓ガラスを割たガラス片や箸、お茶用の熱湯や、掃除道具などで刃傷ざたになることもあり、こちらも身の危険にさらされることも少なからずありました。

後に牛乳は紙パックになり、病室の窓は外され、お茶や掃除道具も管理されるようになりました。

患者さん同士のトラブルで多かったのがタバコやお菓子などの貸し借りでした。

特にタバコは精神病院のなかでは代替貨幣でしたので、タバコを吸わない人でもタバコを所持していたくらいです。

当時、私はヘビースモーカーでしたので患者さんからよくタバコをせびられていました。

ケンカの仲裁が一段落したところに、詰所からにしのくぅ〜ん、運転から電話ぁ〜と呼ばれまして……

いちおう臨床心理士ですけどなにか?

続く……かもしれない。