いちおう臨床心理士ですけどなにか?(昔々その昔のはなし)⑪ -謝罪行脚-
勤務していた精神病院は設立当初は地域には何もなかったのですが、次第に開発され住宅やスーパーや飲食店などがたくさんできて、私が就職した時には住宅街のなかにある精神病院(病床数1200床の巨大精神病院)になっていました。
時代の変遷とともに入院中の患者さん達は開放病棟、閉鎖病棟にかかわらず、外出や外泊等がしやすくなり、毎日散歩、買物、喫茶店、映画、パチンコ、スーパー銭湯、風俗店、旅行等がしやすくなりました。
そうすると、どうしても地域でいろいろトラブルが起こるしクレームとかお𠮟りが入ることも増えていくわけですが、「にしのくん行ってきてくれる?」「えぇ〜、またですかぁ?」ってな感じで謝罪にいくわけです。
万引きや車上ねらい(全ての万引きが意図的ではなく、解離やてんかんによる意識障害によるものも含め)
住居侵入(近隣宅に勝手に上り込み飲食したり昼寝したり……)
飲酒による迷惑行為
業務妨害(飲食店のトイレにトイレットペーパーをまるごと詰め込み溢れさせたり、食料品売り場での漏便)
公然わいせつ(路上で裸になったり、下半身を出していたり)
他にもいろいろあって、110番通報され警察に保護されたりすることも珍しくありません。
身柄を引き取りに行ったり、とにかくアチコチよく謝罪に行きました。
必ず言われたのが「こんな人達を野放しにするとはどういうことだ!」「何かあったらどうしてくれるんだ!」「管理不行き届きだ!」「以後出入り禁止だ!」「賠償しろ!」「訴える!」でしたね。
まぁ、極めつけは「お前じゃ話にならん責任者を連れて来い!」でしたね。
私がやったわけではありませんが、向こうにしてみれば私がやったようなものなので、基本犯人扱いされるわけです。
そりゃあそうですよね。
こちらはひたすら謝罪するしかないわけですが、内心はそんな言い方しなくても……、精神病院があることを分かっていて地域にお店だしたり住居かまえていますよね……、あとからきたあなたがたにアレコレ言われてもねぇ……、あなたがたは他人事のように思っているかもしれませんが、明日は我が身ですよ……、患者さん達はお店の売り上げにすごく貢献してるじゃないの……、なんて思ったりもしていました(絶対言いませんけど)
とにかく謝る、ひたすら謝る、これでもかというくらい謝る、もういいと言われるまでしつこく謝るわけですが、「もういい、帰れ!2度とこんなことないようにしろ!もう、あんたも2度と来るな!」と言われたら「やったぁ~、ラッキー」と思いながら殊勝な顔して病院に戻るわけです。
時には、精神科医療の置かれる状況や法律や人権の話や、病気についての理解をお願いしたりを聞いてくださる方々もいました。
すると、なかには「あんたらも大変やな……」と言ってくださる人もでてきました。
謝罪行脚はある意味地域の方々への精神科医療や病気の理解や啓蒙活動になっていたかなと思っています。
本音は「もぉ〜、勘弁してよぉ〜」ですね(^_^;)
こんなんでも、一応、とりあえず、なんとか臨床心理士ですけどなにか?
いいのかこれで?
なにやってんだオレ?
さらに続く………かもしれない(^_^;)
たぶん続くかな(^_^;)