いちおう臨床心理士ですけどなにか?④

いちおう臨床心理士ですけどなにか?(昔々その昔のはなし) ④ -脱走、捜索、山狩り-


車にガソリン入れて洗車して病院に戻ると「ひとりいなくなったらしいから探しに行って」と言われ、再び車を出すことになりました。

いなくなったというのは無断離院といいまして、要するに閉鎖病棟入院中の患者さんが職員の目を盗み、ちょっとした隙をみて病院から逃げ出した(脱走した)ということです。

なにかあってはいけないので、警察に捜索願いを出し、家族のいる方は家族に連絡し、近隣を捜索するのです。

お家に帰った方は病院から迎えに行き連れ戻しますが、そのまま退院となることもあります。

数日以内に警察に保護されたり、無銭飲食等で捕まったりすると、やはり警察まで迎えに行きます。

たまに、徒歩で100キロ近く遠方まであてもなく(本人のなかではあてがある)歩いていったり、放置自転車を勝手に使い200キロ先の警察署に保護されるなんて強者もいました。

とにかく手の空いている人を集め近隣を探し歩くのですがすぐに発見できることはあまりありません。

夕方から捜索に出て大勢で山狩りのようなことをやったこともあります。

当時の精神病院は開放化の動きがあったものの、まだまだ場末の精神病院は「患者を逃がしてはいけない」という風潮が強かったし、まだまだ精神科疾患のある人は精神病院に閉じ込めておくべきだという考えが大多数でした。

とはいえ、数日間発見されたり保護されたりしない場合は一旦退院処理をすることがほとんどでした。

……さて、ひと通り近隣捜索をしましたが発見にいたりませんでしたが、その方は数日後に無事警察に保護され、警察に迎えにいくのも、にしのくんよろしく……てなことになるのです(もちろんひとりで行くわけではありません)

捜索から戻ると事務局長と医事課長から、ちょっといいかな? と呼ばれ、えぇ〜、なんかやらかしたかなぁ? なにを怒られるのかなぁ? とドキドキしながら事務所へ行くと………

とりあえず臨床心理士ですけどなにか?

さらに続く………かもしれない。