最初の一杯

アルコール依存症において「最初の一杯に手をつけない」と言われておりますが、一杯が一杯では済むはずもなく腹いっぱいになるまで飲み続けることになるからです。

これは、アルコール依存症のみならず、薬物、ギャンブル、食べ吐き、自傷、窃盗、痴漢、盗撮、のぞき、買い物、借金、暴力、ネット、ゲーム、アダルトサイト、ピアッシング、収集、糖尿病、ダイエット、トレーニング、ストーキング、放火、ホスト……などなど、様々な依存症において共通の課題です。

しかし、以前にも述べたように「やめたその瞬間から次の再飲酒や再使用、再行動などの準備がはじまっている」わけでして、最初の1杯に手をつけるずっと前から少しずつ再飲酒の準備が積み重ねられているのです。

これを再発と言います。

例えば、飲んでいなくても飲んでいる時に身につけた行動が反復されることは珍しくなく、飲み物を飲む時につい口をもっていく、つい飲み物をたくさん注いでしまう、会食などの際のお開きの時についグラスやカップの飲み物を空にしてから席を立つ、人が集まる場で酒やつまみの代わりにたくさんのお茶やジュース類やお菓子を買い込み「さぁ飲め飲め、遠慮せず食べろ……」とやってしまうわけです(^_^;)

また、酒を美味しく飲むために、昼食後は極力飲食を控える行動も、飲まなくなっても習慣としてそのまま残ってしまうことが珍しくありません。

さらにさらに、酒の席に参加したり、酒屋の前を通ったり、繁華街を歩いたり……と、試し行動をする方々も少なくありません。

虚勢を張って全く平気な顔をして大丈夫さを取り繕い、カモフラージュしていくこともよく見られます。

おもしろくないこと、気に入らないこと……など、再飲酒の言い訳に使えそうな状況を探索してしまうこともよく見られることです。

仕事などを過剰に頑張り過ぎて、燃え尽き症候群に陥りやすかったり、うつ状態に陥ってしまったり……も再飲酒への準備となります。

逆に過度な回避行動をする方もいますが、これはわかりやすい準備行動ですね。

いくつかの準備が周到(巧妙で不可解で強力)に積み重ねられて……、最初の一杯につながっていくのです。

つまり、最初の一杯以前の行動が非常に重要なことなんですね。

ちなみに、依存症からの回復において、ゼロリスクを目指すのはナンセンスで、再飲酒も順調な回復プロセスとなりますので、再飲酒を恐れる必要はありません。

これらはアルコール依存症のみならず他の依存症(アディクション)にも共通の課題なのです。

個人の意志や根性よりも、対人関係を含めたどういう環境に身を置くかがとても重要なことになります。